つれづれなるまゝに、 日くらし、硯(すずり)にむかひて、 心に移りゆくよしなし事を、 そこはかとなく書きつくれば、 あやしうこそものぐるほしけれ。 ―― 徒然草/吉田兼好 著 ―― 西尾実、安良岡康作 校注、1985、岩波文庫 >文体に沿わせているうちに、ついつい、 >書き手の意図よりも、文体が優位になって、 >書き手は、文体の自己生成を制御できずに、 思考が操られ、手指が動かされる。 まるで、寄生虫に憑りつかれた宿主のように。 他人と生きることを知らなければ、 自らの存在条件を認識して、 独りの人になることはない。 そんなのも、他人が教えてくれること。 成長した文体は、例えば、ブログ、なんていう、 得体の知れないプラットフォームに宿主を連れ出して、 自己再生産を図るために、臆面もなく、 文体をまき散らし始めるのかもしれない。 他の宿主を探すために、誰かの心に宿ればと。 文体の自己生成が止まらない。 僕は、こんなことを書きたかったのか、と訝(いぶか)しむ。 >心に移りゆくよしなし事を、 >そこはかとなく書きつくれば、 くだらないことを、とりとめもなく書きつけてみると、 >あやしうこそものぐるほしけれ。 なんだか妙に、狂ったような気分になってくる。 げみ VIDEO 今でも覚えているあなたの言葉 肩の向こうに見えた景色さえも ―― M/森恵 ―― 富田京子 作詞、奥居香 作曲、1988、CBS/SONY
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2021年11月24日 00:00 |
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>少なくとも、僕は、機能主義とか、原理主義とか、 >そんな対立は、考えなくてもいい。 それなら、とても単純で、とても楽ちんで、 機能主義=原理主義であるのなら、 原理は知らなくてもいいから、 機能させることにリソースを注ぎ込めばいい。 そして、人の文体プログラムは、 頭を使って、身体を使って、 心を動かせているうちに、 自らの機能を向上させるから、 人は、自己組織化する文体ロボットである。 自らを機能させることに集中すれば、 原理は、その後でも遅くない。 げみ VIDEO あなたと出会い 時は流れる 思いを込めた手紙もふえる いつしか二人 互いに響く 時に激しく時に切なく ―― 小さな恋のうた/MONGOL800 ―― 上江洌清作 作詞、MONGOL800 作曲、2001、HIGH WAVE
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2021年11月23日 00:00 |
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>文体に沿わせているうちに、ついつい、 >書き手の意図よりも、文体が優位になって、 >書き手は、文体の自己生成を制御できずに、 まるで、文体プログラミングで動くロボットのようだ。 >文体は、思考の秩序と運動であり、 文体ロボットの僕としては、 自分の運動機能が働けば、そのまま、 僕の目的を果たしていることになる。 >誰にとっても、当たりまえなことなら、 >僕は、考えることも、説明することもなくて、 だから、文体は、自明性と非自明性の懸隔で揺れ動く、 弁証法的な秩序と運動である。 >その文体には、その人そのものが現れる。 >さらには、その人は、その文体を生きている。 >ひいては、文体が、その人の生き方を規定する。 なんて、誇大妄想っぽく書いたけれど、 僕は、僕の文体には、僕そのものが現れることや、 僕は、僕の文体を生きていることや、 僕の文体が、僕の生き方を規定することなど、 知らなくても、目的を果たすことになる。 僕は、そもそも、文体とは何か、 なんてことさえ、分からなくてもいい。 げみ 語句も、配列も、順序も、韻律も、リズムも、 もっぱら、文体のために作られているから、 それらが機能することで、予(あらかじ)め、 または、同時に、原理を満たしている。 少なくとも、僕は、機能主義とか、原理主義とか、 そんな対立は、考えなくてもいい。
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2021年11月22日 00:00 |
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>つまり、一周も二周も回ったような周到さで、 >自らの否定も、自らの肯定も、自前で用意してくるような、 >壊すために作り上げ、作り上げるために壊すような、 >自分が独りで考えていることがすでに、 >複数の人たちと一緒に考えているような考え方で、 >さまざまな側面から、いくつかの位相が入っているような、 そんなのを、読み手に説明するためには、 読み手の思考方法を想定しなければならず、 無駄に難解な文体では、誰の思考にも沿えなくなる。 晦渋さを有難がるのは、浅薄なエリーティズムで、 そんなのが特権的、権威的な時代は過去になればいい。 しかし、あまりに平易な文体、著しく貧弱な文体も、 読み手の思考方法からは逸れてしまうだろう。 げみ 文体を選ぶ、ってのは、読み手とどんな関係を生み出すのか、 ってのを考えているんだと思う。 言葉と切り離せない背景や、言葉が堆積している地層や、 言葉が織り成す手ざわりや、温もりや、冷たさや、 コードや、連辞関係を、感知できる書き手と読み手なら、 文体は、高度な暗号になり、書き手は、 >意識的に、文体で、読み手の選別を図っている。 VIDEO 遠く 遠く ただ 埋もれていた でも 今 あなたに 出会ってしまった ―― アイ/Goose house ―― 秦基博 作詞作曲、2010、Ariola Japan
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2021年11月21日 00:00 |
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>しっかりと独りになるためには、 >しっかりと他人がいなければならない。 他人がいるから、独りが分かる。 分かる、ってのは、分ける、ってことだ。 もっと分かる、ためには、もっと分ける。 繊細に分かる、ためには、繊細に分ける。 繊細、ってのは、ディテールを持ち込むこと。 さらに細かく分解されること。 分解された分だけ、世界は細切れになって、 時として、それは、理解、なんて呼ばれたりする。 そして、分けられたものなら、合わせることができる。 つまり、分離できたら、結合もできる。 分割できたら、一括もできる。 分裂できたら、統合もできる。 分節できたら、生成もできる。 具象化できたら、抽象化もできる。 分かれていないものは、合わせられないし、 合わさっていないと、分けられないから、 それらは、実は、同じ意味になる。 げみ
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2021年11月20日 00:00 |
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>しっかりと独りになるためには、 >しっかりと他人がいなければならない。 確かに孤独を感じさせてくれる他人。 独りになるためには、そんな他人を必要とする。 一人でいるときにでも、一人ではないと思わせて、 二人でいるときにでも、一人を感じさせるくらいの、 矛盾といえば矛盾、当然といえば当然の。 げみ 一人でいることができる、一人でも不安にならない、 そんな人が二人でも安定できるし、 二人でいることができる、二人でも不安にならない、 そんな人が一人でも安定できる。 矛盾といえば矛盾、当然といえば当然の。 VIDEO 君が何か伝えようと にぎり返したその手は ぼくの心のやらかい場所を 今でもまだしめつける ―― 夜空ノムコウ/Uru ―― スガシカオ 作詞、川村結花 作曲、1998、Victor Entertainment
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2021年11月19日 00:00 |
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>雨が降っていなければ、傘はいらない。 >そして、雨の悪口を言い続けるだけで、 >外に出ない人にも傘はいらない。 二択ではない。 二択になるような問題なら、 問いが間違っている。 対立はしない。 いつまでも対立が崩せないのなら、 対蹠点が間違っている。 背馳はしない。 行き違うことができる人たちなら、 並んで歩くこともできる。 >雨の中でも、勇気ある選択で、 >歩き出す人が、傘を必要とする。 並んで歩くことができないのは、 一歩も動けない人たちだろう。 げみ VIDEO あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ 全てが思うほど うまくはいかないみたいだ ―― 夜空ノムコウ/森恵 ―― スガシカオ 作詞、川村結花 作曲、1998、Victor Entertainment
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2021年11月18日 00:00 |
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>それは、自慢できるような何かではなく、 >例えば、雨が降る日には、 >傘を差すような何かである。 >どうしようもない何かである。 雨が降っていなければ、傘はいらない。 そして、雨の悪口を言い続けるだけで、 外に出ない人にも傘はいらない。 雨の中でも、勇気ある選択で、 歩き出す人が、傘を必要とする。 げみ VIDEO 歩き出すことさえも いちいちためらうくせに つまらない常識など つぶせると思ってた ―― 夜空ノムコウ/スガシカオ ―― スガシカオ 作詞、川村結花 作曲、1998、Victor Entertainment
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2021年11月17日 00:00 |
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>読み書きは、読み手も書き手も、しっかりと、 >独りになれる人でなきゃ掛からない魔法である。 しっかりと独りになるためには、 しっかりと他人がいなければならない。 理屈ではそうなるから、矛盾といえば矛盾、 しかし、当然といえば当然のこと。 二人デ居タレドマダ淋シ、 一人ニナツタラナホ淋シ、 シンジツ二人ハ遺瀬(やるせ)ナシ、 シンジツ一人ハ堪(た)ヘガタシ。 ―― 白金之独楽~他ト我/北原白秋 著、 ―― 北原白秋詩集、下、安藤元雄 編、2007、岩波文庫 「二人」と「一人」を入れ替えても、 詩が成り立つから、矛盾といえば矛盾、 しかし、当然といえば当然のこと。 一人デ居タレドマダ淋シ、 二人ニナツタラナホ淋シ、 シンジツ一人ハ遺瀬ナシ、 シンジツ二人ハ堪ヘガタシ。 げみ VIDEO 言葉にできず凍えたままで 人前ではやさしく生きていた しわよせで こんなふうに雑に 雨の夜にきみを抱きしめてた ―― Rain/Goose house ―― 大江千里 作詞作曲、1988、EPIC/SONY RECORDS
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2021年11月16日 00:00 |
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呪われているとしか思えないけれど、僕だって、 いつでもどこでも愚か者でいるわけではない。 独りになったときに油断して、ついついうっかり、 呪いや、魔法に掛かってしまう。 書く、ということも、読む、ということも、 それらは、ある種の呪いや、魔法である。 どちらも、誰かと共にはできなくて、 同じ時間に、同じ部屋で、同じことについて書き、 同じ文章を読むことはできるけれど、 読み書きは、独りにならないとできないことである。 Sieh, wie sie dieselben Möglichkeiten anders an sich tragen und verstehn, so als sähe man verschiedne Zeiten durch zwei gleiche Zimmer gehn. ―― Die Schwestern/Rainer Maria Rilke ごらん ふたりが同じ出来事を 別々に身につけ べつべつに理解するのを それはまるで異(ちが)った時間が ふたつの 同じ部屋をよぎってゆくかのようだ ―― 姉妹/ライナー・マリア・リルケ ―― リルケ詩集/リルケ 著 ―― 富士川英郎 訳、1963、新潮文庫 そして、読み書きは、書く気にならないと書けない、 読む気にならないと読めない。 自分が書かないと書いたことにはならなくて、 自分が読まないと読んだことにはならない。 一緒にいる誰かに、代わりに書いてもらうことも、 誰かに代わって読んであげることもできない。 そのとき、書いたのは、自分ではなく、誰かであり、 読んだのは、誰かではなく、自分である。 読み書きは、読み手も書き手も、しっかりと、 独りになれる人でなきゃ掛からない魔法である。 げみ
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2021年11月15日 00:00 |
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