人は、見たいものしか見えないし、
見たいように世界を描き変える。
聞きたいようにしか聞けなくて、
聞きたい世界に作り変えてしまう。
だから、よく分からないのに、
分かったつもりにならないこと。
自分なんて 色や形を変えながら、
空を移ろい行く雲みたいなものでいい。
すっかり分かっている自分なら、
もう、知るには及ばなくなって、
分かったふりだけが上手くなる。
知ったかぶりにも気づけなくなって、
知らないことにも気づけない。

―― Nudes and Architecture/Peter Zelei、2015
テーマ:哲学/倫理学 - ジャンル:学問・文化・芸術
- 2020年09月23日 00:00 |
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>最初から分かっている人なんていない。
だから、僕たちは、過去の解釈に固執してはならない。
世界がことごとく画図であるなら、
画図は、常に描き変えられなければならない。
>観る者を、新しい解釈に誘ってくれる。
>僕たちを、分かるように駆り立てる。
だから、僕たちは、分かったふりをしてはならない。
分かったつもりになってはならない。
世界は、現在進行形の時制で画される画図であり、
優れた芸術作品なら、古くても新しい。
観る者を、新しい解釈に誘い続けて、
過去に定まった解釈に留まることを許さない。
世界は無常であり、常に描きかけの画図である。

―― Vilhelm's rooms/Peter Zelei、2015
My lines, Your lines, Don't cross them lines
What you like, what I like, Why can't we both be right?
僕の線引き、君の画し方、邪魔立てすることなしに、
君の選好、僕の志向、どちらも正しい、ってことにはできないか?
―― Don't Wanna Fight/Alabama Shakes
―― Brittany Howard 作詞作曲、2015、ATO Records
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- 2020年09月21日 00:00 |
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最初から分かっている人なんていないけれど、
芸術は、分かるように駆り立てる。
>芸術でなければ、人の欠乏を充たせない。
>芸術に表された欠乏を知らなければ、人にはなれない。
そして、欠乏していた自分を知らされる。
欠乏を知ったときには、その分だけ、完全に近づいている。
>芸術の本質はあくまで、
>それが生存を完成せしめ、
>それが完全性と充実を産みだすことにある。
そして、まだ完全には程遠い、と知らされる。
>ペシミズム的芸術とは何を意味するのか?
>それは一つの矛盾ではなかろうか?
世界は不合理で、無意味であり、
それを変えることはできない、とみなせば、
絵画を観て、音楽を聴いて、何になるのだ?
僕たちには、何度も観直す絵画があって、
何度も聴き返す音楽がある。
出来上がった絵画も、音楽も、
変更を加えることはできないのに。
変わろうとする自分を、引き留めるために?
それとも、変わった自分を発見するために?

―― Vilhelm's rooms/Peter Zelei、2015
My lines, Your lines, Don't cross them lines
What you like, what I like, Why can't we both be right?
僕の線引き、君の画し方、邪魔立てすることなしに、
君の選好、僕の志向、どちらも正しい、ってことにはできないか?
―― Don't Wanna Fight/Alabama Shakes
―― Brittany Howard 作詞作曲、2015、ATO Records
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- 2020年09月20日 00:00 |
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分かる人には、分かるもの、といっても、
最初から分かっている人なんていない。
文学作品を読み返したときに、僕たちに、
新しい解釈が生まれたなら、それは、いつの間にか、
分かるものごとが増えていた、ってことだろう。
拾い上げる人には、分かるもの、といっても、
最初から拾っている人なんていない。
おおよそ優れた芸術作品なら、それは、
観る者を、新しい解釈に誘ってくれる。
僕たちを、分かるように駆り立てる。
文学も、絵画も、正しい読み解き方があって、
それを強制されるものではない。
読み込んだ自分が、何をどう展開させるのも自由だ。
自分の読み解き方が、芸術に意味を与えて、
それが、自分の芸術になる。
それが、自分自身を知ることになる。

―― Vilhelm's rooms/Peter Zelei、2015
僕らが手にしている 富は見えないよ
彼らは奪えないし 壊すこともない 世界はただ妬むばっかり
―― ありあまる富/椎名林檎
―― 椎名林檎 作詞作曲、2009、EMIミュージック・ジャパン
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- 2020年09月19日 00:00 |
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本、というのは不思議なメディアで、
本は、景色でも、想いでも、考えでもないのに、
文字だけで読み手に景色を観せて、
読み手に想いを伝えて、読み手を考えさせる。
書く側の想いや考えを、読む側に蘇(よみがえ)らせることは、
いつだって、失敗することが宿命づけられていて、
伝えたいことは、分かる人には、分かるもの、
分からない人には、分からないもの。
絵、というのも不思議なメディアで、
絵には、描き手の、言葉によらない感情が塗り込められている。
描く側の感情を、観る側に蘇らせることは、
いつだって、失敗することが宿命づけられていて、
伝えたいことは、拾い上げる人には、分かるもの、
埋もれさせてしまう人には、分からないもの。

―― Vilhelm's rooms/Peter Zelei、2015
遠く 遠く ただ埋もれていた
でも 今 あなたに出会ってしまった
―― アイ/Goose house
―― 秦基博 作詞作曲、2010、Ariola Japan
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- 2020年09月17日 00:00 |
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古仏言(いはく)、「画餅不充飢(がびようふじゆうき)」
―― 正法眼蔵(二)/道元 著、
―― 水野弥穂子 校注、1990、岩波文庫
正法眼蔵、第24、「画餅(がびょう)」から引く。
画餅とは、絵に描いた餅のこと。
香厳智閑(きょうげんしかん、生年不詳~898)が、
絵に描いた餅は飢えを充たさない、と言って、
すべての書物を焼いた故事に由来する。
生死去来(しようじこらい)はことごとく画図なり。
無上菩提すなわち画図なり。
おほよそ法界虚空(ほつかいこくう)、
いづれも画図にあらざるなし。
しかし、道元はふっかける。
カントっぽく言えば、現象界は、ことごとく画図である。
ラカンっぽく言えば、現実界は、すなわち画図である。
現象界も物自体も、象徴界も現実界も、
いずれも画図でない世界はない。
しかあればすなはち、画餅にあらざれば充飢の薬なし。
そうであるなら、絵に描いた餅でなければ、飢えを充たせない。
調子に乗って、言い過ぎているけれど。
さらに言ってしまえば、芸術でなければ、人の欠乏を充たせない。
さらに転じて、芸術に表わされた欠乏を知らなければ、人にはなれない。
裏を返せば、ニーチェになる。
芸術の本質はあくまで、
それが生存を完成せしめ、
それが完全性と充実を産みだすことにある。
芸術は本質的に、生存の肯定、祝福、神化である……
ペシミズム的芸術とは何を意味するのか?
それは一つの矛盾ではなかろうか?
―― 権力への意志/フリードリヒ・ニーチェ 著、
―― 原佑 訳、1993、ちくま学芸文庫

―― Vilhelm's rooms/Peter Zelei、2015
静寂を破る独逸車と巡回車
警報 爆音 現実界 或る浮遊
―― 罪と罰/椎名林檎
―― 椎名林檎 作詞作曲、2000、東芝EMI
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- 2020年09月16日 00:00 |
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穴を掘っている場合ではない。
莫近国王大臣、
如浄(にょじょう)は、たいしたことは、
言っていない。
別れの挨拶みたいなもの。
よくあるフレーズを、
使い回しているだけ。
定型句、テンプレート。
如浄の台詞には、本質がない。
空気を揺らせただけ。
悟った者どうしの会話なら、
それくらいの了解はあるだろう。
本質は空(あ)いている。
本質は穴っぽこ。
正しいとか、間違っているとか、
そんなのでは埋まらない。
僕たちには、空いた穴に、
言葉を投げ入れて、
本質を埋める自由がある。
僕は、何を投げるのか。
きっと、玄明(げんみょう)を殴り殺して、
穴に投げ入れたのだろう。
見えない自由がほしくて
見えない銃を撃ちまくる
本当の声を聞かせておくれよ
―― TRAIN-TRAIN/THE BLUE HEARTS
―― 作詞、作曲、真島昌利、
―― 1988、メルダック、徳間ジャパンコミュニケーションズ
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- 2017年09月28日 12:08 |
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