ただ好意だけで成り立っているような、
異なる世界があったとして、
僕は、そんな世界に生まれなくてよかったと、
思うことができるかどうか。
今、僕が生きている世界に、
悪意や、敵意や、反感があっても、
僕は、この世界に生まれてよかったと、
思うことができるかどうか。
ただ出会いだけが続くような、
異なる世界があったとして、
僕は、そんな世界に生まれなくてよかったと、
思うことができるかどうか。
今、僕が生きている世界に、
悲しくて、苦しい別れがあっても、
僕は、この世界に生まれてよかったと、
思うことができるかどうか。
ただ楽しいことばかりが連なった、
異なる世界があったとして、
僕は、そんな世界に生まれなくてよかったと、
思うことができるかどうか。
今、僕が生きている世界の、
人知れぬ苦労や、淋しさの中で、
僕は、この世界に生まれてよかったと、
思うことができるかどうか。
ただ報われることばかりが繰り返される、
異なる世界があったとして、
僕は、そんな世界に生まれなくてよかったと、
思うことができるかどうか。
今、僕が生きている世界で、
がんばって、だめで、悩んで、
汗を流しても、できないことはできなくて、
涙をこらえていても、
僕は、この世界に生まれてよかったと、
思うことができるかどうか。
毎日の人知れぬ苦労や淋しみも無く
ただ楽しいことばかりだったら
愛なんて知らずに済んだのにな
―― 花束を君に/宇多田ヒカル
―― 宇多田ヒカル 作詞作曲、2016、Virgin Music
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- 2019年02月19日 00:03 |
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ところで、僕の毎日は、
僕の思いや行いだけで、
構成されているわけではない。
好意にせよ、悪意にせよ、
僕への関わりを持つすべての人たちの、
思いや行いが織り込まれている。
嫌うことさえしたくない、というのは、
その中から、悪意や敵意や反感だけを、
僕が恣意的に切り分けて、
最初からなかったことにしたいという、
不可能な欲求である。
すべては、すでに織り込まれて不可分であり、
できないことをすることはできない。
それぞれ別々の人 好きになっても
あなた残してくれた すべて忘れないで
誰かを愛せるように
―― ひだまりの詩/Le Couple
―― 水野幸代 作詞、日向敏文 作曲、1997、PONY CANYON
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- 2019年02月18日 00:14 |
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ともあれ、嫌いなものごとは、
考え続けていたくない。
考え続けても苦しくてつらいだけだから、
それは嫌いなものごとになる。
嫌いな人のことは、
考え続けていたくない。
では、嫌いな人というのは、実は、
嫌うことさえしたくない人である。
言葉が通じなくて、
問いが共有されなくて、
僕が何を嫌っているのか、
それさえも分かってもらえなくて、
嫌い、という関係さえ、
持っていたくないような、
どんなつながりでも、
耐えられそうにないような、
自分が思うよりも、もっと、
強く嫌っている人のことである。
頑張って ダメで 悩んで
汗流して できなくって
バカなやつだって 笑われたって 涙こらえて
―― MR.LONELY/玉置浩二
―― 玉置浩二 作詞作曲、1997、Sony Records
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- 2019年02月17日 00:12 |
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なるほど、誰とでも仲良くする、
なんてのは、いい心がけと思うけれど、
誰とでも、というときには、
嫌いな人が含まれている。
仲良くできないゆえに、
その人は、嫌いな人なのに。
誰とでも、というときには、
誰とでも仲良くしたいわけではない、
と思っている相手を含んでいる。
さらには、誰とも仲良くしたくない、
と思っている相手を含んでいるから、
結局、仲良くしてもらえないことになる。
嫌いと思う人を、嫌いと思わない、とか、
仲良くしたくないと思う人と、
仲良くしたいと思う、とか、
できないことをすることはできない。
そんなことをすれば、もはや、
自分が自分でいられるような気がしない。
誰とでも仲良くする、なんて、
無理なエクリチュールを選択したときは、
感情を曲げて、感受性を鈍らせて、
きっと、顔つきも、服も、持ちものも、
考え方も、話し方もありきたりで、
つまらないパッケージが求められるだろう。
そんな人は、憶えるより先に、忘れてしまう。
好きにもなれないし、嫌いにもなれない。
自分が思うより 恋をしていたあなたに
あれから思うように 息ができない
あんなに側にいたのに まるで嘘みたい
とても忘れられない それだけが確か
―― Lemon/米津玄師
―― 米津玄師 作詞作曲、2018、Sony Music Records
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- 2019年02月16日 00:24 |
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どこからか、薄っぺらい、なんて、
お決まりの台詞が返ってきそうだ。
きれいごと、なんて、
ひと言で片づけて馬鹿にする。
斜に構えて、深刻ぶっているほうが、
よほど利口っぽいし、
あるいは、正面から取り組まずに、
嘲笑しているほうが楽ちんだ。
本気を出していないふりをして、
言い訳を用意しているのなら、
恥をかかなくても済むし、
薄っぺらいきれいごとなどしなくてもいい。
しかし、薄っぺらいきれいごともできなくて、
どんなに立派なことをするつもりか。
毎日の人知れぬ苦労や淋しみも無く
ただ楽しいことばかりだったら
愛なんて知らずに済んだのにな
―― 花束を君に/宇多田ヒカル
―― 宇多田ヒカル 作詞作曲、2016、Virgin Music
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- 2019年02月15日 00:07 |
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見たくないものは、見続けていられない。
できないことはできない。
見続けていられないゆえに、
それは、見たくないものである。
嫌いな人とは、つき合っていられない。
できないことはできない。
つき合っていられないゆえに、
その人は、嫌いな人である。
愚かさや醜さを慎重に回避しながら、
僕たちは、毎日を過ごしている。
愚かさや醜さから引き起こされるのは、
嫌悪や恐怖や恥辱や憎悪であり、
それを前面に押し出してくる人を、
僕たちは、嫌って、怖がって、
見たくなくて、見続けていられなくて、
つき合っていられなくて、
慎重に回避しながら、
やっとのことで、毎日を過ごしている。
自分勝手なんだけど、どうしたって、
できないことはできない。
できないことをすることはできない。
たとえそれが、目の前にあっても、
見たくないものは見えなくて、
見たいものが見えてくる。
見たいものなら、見続けていられる。
たとえそれが、目の前になくても。
それぞれ別々の人 好きになっても
あなた残してくれた すべて忘れないで
誰かを愛せるように
―― ひだまりの詩/Le Couple
―― 水野幸代 作詞、日向敏文 作曲、1997、PONY CANYON
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- 2019年02月14日 17:23 |
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興味の好みは明確で、
不思議で、いかがわしくて、
弱くて、そして小さいもの。
だったら探さなくても、
それは、子供ではないのか?
記憶にある風景なんかよりも。
失ったものは、子供の視点で、
代わりに得たものは、もの知りで、
博覧強記な、大人の視点だ。
それは、高層ビルと駄菓子屋を対立させて、
弱くて小さいものがよいとする、
使い古されたテンプレ。
あるいは、昔はよかった、という、
鉄板で作られたテンプレ。
考える、ということを知らないトレース。
それにしても、吉田兼好も、松山巖も、
自分が何を言っているのか、
まるで分かってないらしい。
よかった昔を、よくない今に、
変えたのは誰だ?
今どきの子供が変えたのか?
嫌いとか、醜いとか、
免罪符に書き込んで、子供たちには、
原罪のように背負わせる。
>種村さん、見ないでよかったよ。
何を言っているのだろう。
子供たちは、生まれたときから、
毎日、見ているのに。
どんなときも どんなときも ビルの間 窮屈そうに
落ちて行く夕陽に 焦る気持ち溶かして行こう
―― どんなときも。/槇原敬之
―― 槇原敬之 作詞作曲、1991、WEA MUSIC
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- 2019年01月30日 00:04 |
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>種村さん、見ないでよかったよ。
種村さんが見ないでよかったのか、
種村さん、って呼びかけて、
見ることがなかった種村さんを、
松山巖が羨んでいるのか、
読み手は、自分が読みたいように読むけれど、
いずれにしても、昔はよかった、ってことだ。
駄菓子屋があって、子供たちが遊んでいた。
不思議なもの、いかがわしいもの、
弱いもの、小さいものがすぐに見つかって、
街に共存することが許されていた。
それに引き替え、現在は。
なに事も、古き世のみぞしたはしき。
今様は無下にいやしくこそなりゆくめれ。
文(ふみ)の詞(ことば)などぞ、
昔の反古(ほうご)どもはいみじき。
ただ言ふ言葉も口をしうこそなりもとゆくなれ。
―― 徒然草、第二十二段
何ごとも、昔はよかった。
現在は、むやみに下品になっていく。
手紙の言葉なども、
昔の手紙は立派だった。
ふだんの話し言葉も、
失望を感じるようになっていく。
って、吉田兼好が、
鎌倉時代に書いているのは、
種村さんなら、当然、知っていただろう。
“昔は良かったね”といつも口にしながら
生きて行くのは本当に嫌だから
―― どんなときも。/槇原敬之
―― 槇原敬之 作詞作曲、1991、WEA MUSIC
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- 2019年01月29日 00:37 |
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