>驚いたことに、誰もかぐや姫を見ていないんだ。
非現実的な美しさの、かぐや姫のその資質が、
現実のものかどうかは、もはや問わない。
かぐや姫の美しさを認める人たちがいるのなら、
たとえ美しさが事実でなくても、
社会的な事実として成立している。
5人は、かぐや姫を見てもいないが、
かぐや姫の美しさを信じて、命令に服従する。
信じる者が、信じさせる者を支えるんだ。
>聖書には、奴隷に関する記述が少なく、
>奴隷に関して特筆すべき事項はない。
>しかし、奴隷を批判する記述がないことは、
>大いに特筆に値する。
>奴隷は、自ら進んで奴隷になり、
>彼らはそれに気づいていない。
>それどころか、彼らは奴隷であることに、
>誇りさえ見い出している。
服従する者が、服従させる者を支えるんだ。
5人は、かぐや姫のリクエストに応えて、
竜の頸の珠とか、燕の子安貝とかを探しに旅立ち、
中納言は殉教してしまう。
信仰とは、何も知らない未確認生物からの、
無理難題に従えるかどうか。
信仰とは、論理が途絶えた崖っぷちに立って、
そこから、跳べるかどうか。
キミが好きだよエイリアン この星のこの僻地で
魔法をかけてみせるさ いいかい
―― エイリアンズ/キリンジ
―― 堀込泰行 作詞作曲、2000、Warner Music Japan
そして、竹取物語は、
稀代のアイドル、かぐや姫を巡るラブストーリーで、
つくづく思うのは、信仰と恋愛の相似性。
それは、また、別の機会に。
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- 2019年06月13日 00:02 |
- 神
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その中に猶いひけるは、
色好といはるゝかぎり五人、
思ひ止む時なく夜晝來けり。
その名一人は石作皇子(いしつくりのみこ)、
一人は車持皇子(くらもちのみこ)、
一人は右大臣阿倍御主人(あべのみうし)、
一人は大納言大伴御行(おおとものみゆき)、
一人は中納言石上麿呂(いそかみのまろ)、
たゞこの人々なりけり。
世の中に多かる人をだに、
少しもかたちよしと聞きては、
見まほしうする人々なりければ、
かぐや姫を見まほしうして、
物も食はず思ひつゝ、
かの家に行きてたたずみありきけれども、
かひあるべくもあらず。
文を書きてやれども、
返事もせず、
わび歌など書きて遣れども、
かへしもせず。
「かひなし。」と思へども、
十一月(しもつき)十二月のふりこほり、
六月の照りはたゝくにもさはらず來けり。
―― 竹取物語
ブームが去って、しらけてきた中で、
なお言い寄ってくるのは、やりちんの5人だけ。
想いが止まることはなく、夜も昼も通ってくる。
その名は、石作皇子(いしつくりのみこ)、
車持皇子(くらもちのみこ)、
右大臣阿倍御主人(あべのみうし)、
大納言大伴御行(おおとものみゆき)、
中納言石上麿呂(いそかみのまろ)、
こいつらだけ。
世の中に、わりとよくいる女でも、
少しでも美しいと聞いたなら、
エッチをしたがる人たちなので、
かぐや姫とエッチがしたくて、
食うものも食わず思い続けて、
彼女の家に行って、立ちつくしたり、
うろついたりしてみても、
何も成果が上がりそうにない。
用件を書いても、返事はなく、
ラブレターを書いて送っても、
返しもしない。
効果がないとは思うけれど、
11月、12月の降雪、凍結、
6月の日照、雷光にも、
めげることなく通ってくる。
You reached for the secret too soon, you cried for the moon.
Shine on you crazy diamond.
―― Shine On You Crazy Diamond/Pink Floyd
―― Roger Waters 作詞、Richard Wright、Roger Waters、David Gilmour 作曲、
―― 1975、Harvest Records
かぐや姫は、相変わらず未確認である。
かぐや姫は、依然として沈黙しているが、
それでも、5人は自ら自分を追い込んで行く。
もはや、信仰が成立している。
やがて5人は、姿も声も筆跡も知らない未確認生物から、
無理難題を言いつけられて、
エイリアンの言いなりになる。

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- 2019年06月12日 00:28 |
- 神
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解ろうとしても、解りっこない、
それが神の立ち位置だ。
僕は、そんな位置に神を置く。
僕ごときに理解できるようなものなら、
そんなものは神ではない、って思う。
そんな神なら、出来の悪い人に過ぎない。
神を、僕くらいの程度の、
僕ごときに理解できるくらいの、
出来損ないの人に貶めることになる。
僕につっこみを入れられるような神なら、
まったく神の説明ではないし、逆に、
僕に反論し、理解させようとする説明も同様だ。
説明的な解答ができる問い、ってことを、
あらかじめ認めてしまっている時点で、
すでに神の説明ではなくなっている。
僕にできるのは、そんな立ち位置に置く者を、
疑似問題と呼ぶか、問題と呼ばないか、
神と呼ぶか、呼ばないか、ってことくらい。
神と呼ぶのなら、それは、
それぞれの宗教の、それぞれの信仰者の、
それぞれのキャラの神になるけれど。
まるで僕らは エイリアンズ
禁断の実ほおばっては 月の裏を夢見て
―― エイリアンズ/キリンジ
―― 堀込泰行 作詞作曲、2000、Warner Music Japan
絶対的な美しさは、見えてはならない。
可視化されることで、
絶対性が剥奪されるから。
世界の男(をのこ)、貴なるも賤しきも、
「いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな。」と、
音に聞きめでて惑ふ。
その傍(あたり)の垣にも家のとにも居(を)る人だに、
容易(たはやす)く見るまじきものを、
夜は安きいもねず、
闇の夜に出でても穴を抉(くじ)り、
こゝかしこより覗き垣間見惑ひあへり。
―― 竹取物語
世間の男たちは、どいつもこいつも、
なんとか、かぐや姫をゲットしたい、
見るだけでも見てみたい、ってざわついている。
家の周りでも、近くの垣根でも、
ファンが押しかけて、
家の者でも容易に見られそうもないのに、
夜も寝ないで、闇夜に出没して、
ところ構わず穴を開けて、覗いている。
みんな乱心していて、穏やかではない。
社会現象を巻き起こしたかぐや姫だが、
驚いたことに、誰もかぐや姫を見ていないんだ。
かぐや姫は、未確認生物であり、
竹取物語は、隠れキャラのフォークロアである。
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- 2019年06月11日 00:01 |
- 神
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>「無」は、描かれた存在を消去したときの残像で、
>その喪失した影が白いんだ。
読み手に、ふわふわと詩情が漂えば、
僕は、詩を書いたことになるが、それにしても、
僕は、詩人になりたがるにもほどがある。

that her face, at first just ghostly,
turned a whiter shade of pale って古い歌がある。
ハモンド・オルガンが聴きたくなる。
that her face, at first just ghostly,
turned a whiter shade of pale
―― A Whiter Shade of Pale/Procol Harum
―― Keith Reid 作詞、Gary Brooker、Matthew Fisher 作曲、1967、DERAM
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- 2019年06月10日 00:02 |
- 神
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多くの人の考え方は、まず「無」があって、
「無」に何らかの存在が加わって「有」になる。
白紙の「無」に、存在を描き加えて「有」になる。
でも、ベルクソンは、違う、という。
何らかの存在が思い描かれ、
それを消し去ることで「無」が得られる。

ガブリエルの教室に遅れてきた者は、
「有」を観ていないから、「無」も観えない。
「有」でも「無」でもなく、「空」を観る。
「無」=「有」+否定だ。
ない、っていうのは、ある+否定で、
何かがあってこそ、それを否定できる。
否定文は、肯定文を否定して作るもの。
だから、「無」を表すときは、非-「有」とか、
非-存在、とかの複合的な表現になる。
では、基礎的なのは、「有」である。
存在、のほうが単純だ。
「無」は、描かれた存在を消去したときの残像で、
その喪失した影が白いんだ。
この世にあって欲しい物を作るよ
小さくて慎ましくて無くなる瞬間
―― 人生は夢だらけ/椎名林檎
―― 椎名林檎 作詞作曲、2016、2017、EMI Records Japan
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- 2019年06月09日 00:02 |
- 神
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「有」と「無」と「空」。
こんなのは、問題を、問題と思えるかどうか、
まず、それが問題になるが、
きっと違いの分かる人はいる、
そう信じて、書いてみる。
A、 Eテレ、欲望の哲学史、序章で、
A、 マルクス・ガブリエルが、
A、 教室で講義をしている。
A、 ガブリエルは、その左手には、
A、 何も持っていない。
B、 ガブリエルは、左手に、
B、 1本のペンを持って質問する。
B、 『では 質問です。
B、 私は今 左手にいくつの「もの」を
B、 持っているでしょう?』
C、 『「1本のペン」と答えるならば
C、 なぜこれを “1つ”と
C、 数えられるのでしょう?』
C、 ガブリエルは、ペンのキャップを外した。
C、 『“2つ”かもしれない』
D、 ガブリエルは、キャップを戻して、
D、 ペンをホワイトボードに置いた。
D、 教室での講義は続く。
D、 ガブリエルは、その左手には、
D、 何も持っていない。
Aの時点と、Dの時点で、
ガブリエルに違った様子はない。
Aの時点から講義を聞いていた者と、
遅れて教室に入ってきた者に、
違いが現れる。
Aの時点から講義を聞いていた者は、
Bの時に、ペンの「有」を観て、
Dの時に、ペンの「無」を観る。
Dの時点で遅れて教室に入ってきた者は、
ペンに関して「空」を観ている。
Bの時点から講義を聞いていた者は、
Bの時に、1つのものを観て、
Cの時に、2つのものを観る。
Cの時点で遅れて教室に入ってきた者は、
最初から、2つのものを観ている。
Dの時点で遅れて教室に入ってきた者は、
数に関して「空」を観ている。
こんな時代じゃあ手間暇掛けようが掛けなかろうが終いには一緒くた
きっと違いの分かる人は居ます そう信じて丁寧に拵えて居ましょう
―― 人生は夢だらけ/椎名林檎
―― 椎名林檎 作詞作曲、2016、2017、EMI Records Japan

マルクス・ガブリエル ―― 於、大阪市淀川区、十三(じゅうそう)の焼肉屋
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- 2019年06月08日 00:01 |
- 神
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>どれだけたくさんの人が死んでも、
>僕たちは、自分たちの正しさのほうが大切だ。
>僕たちは、ノアの末裔だから。
そう考える僕は、救いがたい自己中になるけれど、
何を言うにしても、僕は、ひとまずは、
それを認めなきゃ仕方がないのかもしれない。
誰もがそうである、なんてことは言わない。
だから、自己中、ってのは、
僕の、という所有格に掛かる接頭辞みたいなもので、
こんな自己中は、僕一人でたくさんだ。
永遠なんて素気ないね ほんの仮初めが好いね
愈々(いよいよ)宴も酣(たけなわ)、本番です
―― 長く短い祭/椎名林檎、長岡亮介
―― 椎名林檎 作詞作曲、2015、EMI Records Japan
>海の水がなくなることはない。
>海の水がなくなれば、誰もそれを海とは呼ばないから。
海、なんて言っているうちは、海はある。
神、なんて言っているうちは、神はいる。
だから、神はいない、なんて、
言っているうちは、神はいる。
ここで、ベルグソンを思い出して、
加えて、マルクス・ガブリエルの講義と、
脈絡もなく、竹取物語が思い浮かぶ。
そして、仏教の「空」に続く。

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- 2019年06月07日 00:02 |
- 神
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あなたがたを襲った試練で、
人間として耐えられないようなものはなかったはずです。
神は真実な方です。
あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、
試練と共に、それに耐えられるよう、
逃れる道をも備えていてくださいます。
―― コリントの信徒への手紙一、10章、13節、新共同訳

止まない雨はない、なんていう。
でも、いつ止むのかは、誰も教えてくれない。
例えば、雨が止むのが40日後だったら、
止む前に、人には耐えられなくなっている。
ノアが方舟にこもっているとき、
方舟の甲板には、衰弱死とか、餓死とか、
凍死とか、溺死になる前の人たちを、
満載していたはずだ。
鳥につつかれて、叫び声を上げて、
耐えられなくて、海に落ちて、
それを待っているタコとか、イカとか、
イルカや、アザラシに捕食されたりして、
そんな様子は、容易に想像がつくけれど、
僕たちは、一生に一度も想像することはない。
創世記を読みながらでも、まるで想い浮かばない。
知らない他人のことなんて、どうでもいいもの。
どれだけたくさんの人が死んでも、
僕たちは、自分たちの正しさのほうが大切だ。
僕たちは、ノアの末裔だから。
すべては始まり 終わる頃には 気付いてよ
気付いたら 産まれた場所から 歩き出せ 歩き出せ
―― Remember me/くるり
―― 岸田繁 作詞作曲、2013、Speedstar Records
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- 2019年06月06日 00:02 |
- 神
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あなたがたを襲った試練で、
人間として耐えられないようなものはなかったはずです。
神は真実な方です。
あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、
試練と共に、それに耐えられるよう、
逃れる道をも備えていてくださいます。
―― コリントの信徒への手紙一、10章、13節、新共同訳
>僕は、僕が論証したいことを論証する。
>論証したくないことは、論証できない。
つまり、考える、とは、
そう考える、あるいは、
そう考えない、
なんてものではないらしい。
考える、とは、
そう考えたい、あるいは、
そう考えたくない、ってことだ。
あなたがたを襲った試練で、
人間として耐えられないようなものはなかったはずです(と考えたい)。
神は真実な方です(と考えたい)。
あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、
試練と共に、それに耐えられるよう、
逃れる道をも備えていてくださいます(と考えたい)。
そう考えたい、あるいは、
そう考えたくない、には間違いの余地がない。
正しいも、正しくないもなくて、
すでに持ってしまった自分の気持ちなんだから、
正しいに決まっている。
>僕は、僕が論証したいことを論証する(と考えたいのが正しいと思っている)。
>論証したくないことは、論証できない(と考えたいのが正しいと思っている)。
つまり、考える、とは、
そう考える、あるいは、
そう考えない、
なんてものではないらしい(と考えたいのが正しいと思っている)。
考える、とは、
そう考えたい、あるいは、
そう考えたくない、ってことだ(と考えたいのが正しいと思っている)。
あなたがたを襲った試練で、
人間として耐えられないようなものはなかったはずです(と考えたいのが正しいと思っている)。
神は真実な方です(と考えたいのが正しいと思っている)。
あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、
試練と共に、それに耐えられるよう、
逃れる道をも備えていてくださいます(と考えたいのが正しいと思っている)。
絶対に、をつけてもいい。
絶対に正しいに決まっている。
自分の気持ちなんだから。
あなたはすぐに絶対などと云う あたしは何時も其れを厭がるの
だって冷めてしまっちゃえば 其れすら嘘になるじゃない
―― ギブス/椎名林檎
―― 椎名林檎 作詞作曲、2000、東芝EMI
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- 2019年06月04日 00:01 |
- 神
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