tetsugaku poet

qinggengcai

塗装生活 79/xx


>では、正気とは、―― 絶対的な正しさではなく、
>生活上の実践に利益があるかないかで決められる。
>善とは、―― 絶対的な善など望むべくもなく、
>共同体の利益になる行為かどうかで決められる。

正気と、善を、強引に定義した。
味もそっ気もない、プラグマティックな定義だと思う。
精神医療も、司法や行政も、みもふたもないような、
プラグマティズムだから、それでいい。

>義務教育、高等教育に適応して、
>組織に適応して働いて、
>恋愛に適応して、家庭に適応して、
>っていう、規格化が嫌い。

精神医療は、それらに適応できない者の病理を扱う。
では、病気とは、規格外のことである。



    

    Model citizen in every way
    May the road rise with you

    ―― Rise/Public Image Ltd.
    ―― John Lydon 作詞作曲、Bill O. Laswell 作曲、1986、Virgin



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    げみ



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  1. 2021年08月31日 00:00 |
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塗装生活 78/xx


>例えば、中学に行って、高校に行って、
>就職して、結婚して、って当為性が嫌い。
主人公は、義務教育、高等教育に適応して、
組織に適応して働いて、
恋愛に適応して、家庭に適応して、
っていう、規格化が嫌い。

それらに適応できない者を、精神医療が扱い、
適法性に触れるのなら、司法、行政の領分だ。
乱暴に言って、つまり、狂気、
端的に言って、つまり、悪。
では、正気とは、―― 絶対的な正しさではなく、
生活上の実践に利益があるかないかで決められる。

善とは、―― 絶対的な善など望むべくもなく、
共同体の利益になる行為かどうかで決められる。



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    げみ



正気や、善は、おそらく、生きる意味を問うための、
大切な土台に数え上げられる。



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  1. 2021年08月30日 00:00 |
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塗装生活 77/xx


「この世界には自然の法則というやつが厳存しているので、
人間が何をしてみても、
それはけっして自分の意欲によって実行し得るのではなく、
自然の法則によっておのずとできてゆく」

    主人公は、とにかく、法則が嫌いだ。
    法則に従うことが、すなわち、
    何も考えないことになり、直ちに、
    意志を持たないことになる。
    二極思考で、端っこまで振れさせる。


「したがって、ただこの自然律を発見しさえすれば、
もう人間は自分の行為に責任をもたないですむから、
生活が恐ろしく楽になってしまう。」

    例えば、中学に行って、高校に行って、
    就職して、結婚して、って当為性が嫌い。
    何もしないよりは、自分の選択にも、行為にも、
    責任を持つことになると思うけれど。
    ちなみに、彼は20年も引きこもっている。



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「早い話が、現に諸君は人間を旧習から解放して、
科学と常識の要求通りに人間の意志を強制しようとしている。」

    確かに、効率が優先される僕たちの価値観は、
    強迫観念っぽく急がせて、考える暇を与えない。
    気まぐれに、旧習に倣ってみたときの焦燥感が半端ない。
    僕たちは、無駄や余白、遊びの多さに耐えられなくなった。
    無為な20年を過ごしている彼とは違う。


「理性や数学の推論によって保証された
本当のノーマルな利益に逆行しないということが、
いつも人間にとって真に有利であり、
かつ全人類の服膺ふくようすべき法則であるなどと、
どうして諸君はそれほど確実に信じ切っていられるのか?」

    確かに、思考も、行動も、
    必ずしも、合理的である必要はない。
    合理的であることが正しいと考えること、
    それ自体は合理的とはいえない。
    合理性への無反省な帰依は、信仰である。


「そんなことはまだ今のところ、
単に諸君の仮定にすぎないではないか。
かりにそれが論理の法則であるとしても、
けっして人類の法則ではないかもしれぬ。
諸君、諸君はおそらくわたしを
気ちがいだと思っていられるだろう?」

    自己アピールが大げさで、
    そのくせ、言葉と行動がまったく一致しない。
    行動しないので、一致するわけがないが、
    あまつさえ、言葉もまったく一致しない。
    彼は、20歳の風俗嬢に、ノーマルな家庭の、

    ノーマルな幸せを説いてみせたりする。
    ノーマルを嫌う自らは、妻も子どももいないくせに。



    ―― 地下生活者の手記/ドストエーフスキイ全集 5
    ―― 米川正夫訳、1970、河出書房新社



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    げみ



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  1. 2021年08月29日 00:00 |
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塗装生活 76/xx


>人が生きる理由は何か、
>ってのは、今の自分が理解できる理由に、
>収めてしまってもいいのか。
>ないものねだり、ではあるけれど。
「地下生活…」の主人公なら、そこに収める。

>「考えてばかりいて、
>したがってなんにもしない人間」である。
>自らを「周囲のだれよりも賢」いと思い、
>「高潔」であるゆえに「何一つ」できないと考える。
彼は、根拠もなく、断定的な思想を持っている。

彼の、その賢さを超える経験が、
もう、彼に訪れることはない。
その高潔さが及ばない経験が、
もはや、彼に舞い降りてくることはない。
誰よりも賢いのなら、経験して何になる?



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>「鈍感で浅薄な人間であればこそ、
>そのために実行的にできている」と言う。
まるで違う、まるで逆である。
実行的に生きる人間であればこそ、
鈍感で浅薄な自分を思い知らされる。

自らを誰よりも賢いなんて、思えなくさせられる。
それとも、自分の愚かさを知らずに、
どうやって賢くなれるんだ?



    ―― 地下生活者の手記/ドストエーフスキイ全集 5
    ―― 米川正夫訳、1970、河出書房新社



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    げみ



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  1. 2021年08月28日 00:00 |
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塗装生活 75/xx


考えてばかりいて、
ゆえに、何もしない、って人はいる。
たいして考えもせずに、
直面する課題に、取り組む人がいる一方で。

例えば、フョードル・ドストエフスキー、
「地下生活者の手記」の主人公。
彼によれば、自分は、
「強烈な意識を有する人間」で、

「考えてばかりいて、
したがってなんにもしない人間」である。
自らを「周囲のだれよりも賢」いと思い、
「高潔」であるゆえに「何一つ」できないと考える。

対して、普通の人々、
「直情径行的」で、「ノーマルな人間」は、
「頭が鈍」くて、「馬鹿」で、
「生まれつき愚鈍」で、

「鈍感で浅薄な人間であればこそ、
そのために実行的にできている」と言う。
そんな、「自然と真理の人
(l'homme de la nature et de la vérité)」を見ると、

彼は「腸が煮えくり返るほど羨しくなる」らしい。



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「なんにもしないのが一番いい」、
「瞑想的惰性が一番いい」。
「癇癪が立ってじりじりするほど、
ノーマルな人間を羨む」けれど、

その「仲間入りをしたくない」。
ここまで激しくこじれてくると、
論理もちぐはぐで、行動もばらばらになる。
自己愛と承認欲求に駆られて迷走するが、

その都度、ブーメランが突き刺さり、もはや、
馬鹿、鈍感、浅薄を志向しているとしか思えない。
ものごとが悪い方に向かうと、
怒りを抑えきれず、後戻りはできない。

躊躇(ためらう)うことなく、最悪まで落ちる。



    ―― 地下生活者の手記/ドストエーフスキイ全集 5
    ―― 米川正夫訳、1970、河出書房新社



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    げみ



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  1. 2021年08月26日 00:00 |
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塗装生活 74/xx


生きること、に限らず、
絶対主義 ―― ものごとには絶対的な意味がある、
虚無主義 ―― そんなものはない、

そう二分すれば、ニーチェは虚無主義になる。
ニーチェは絶対主義を否定して、
しかし、虚無主義を批判した。

ものごとには、意味なんてないけれど、
だから、意味は自分で見つけろ、って言った。
自分で与えろ、自分で作れ、ってことだ。

ないものは、見つけられないもの。



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    げみ



    以前には、人生には生きる意義があるのかどうかを
    知ることが問題であった。
    しかし、ここでは反対に、人生には意義がなければないだけ、
    それだけよりよく生きられると思われる。
    ―― シーシュポスの神話/アルベール・カミュ
    ―― 清水徹訳、1969、新潮文庫



自分で意味を与える者、
自分で意味を作る者にとって、
最も邪魔になるものは、

プリセットされた意味である。



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  1. 2021年08月25日 00:00 |
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塗装生活 73/xx


>人が生きる理由は何か、
>ってのは、今の自分が理解できる理由に、
>収めてしまってもいいのか。
なんだか、まるで関係のない話をしたくなった。

何から話せばいいのだろう。
高校1年の頃、僕は『りぼん』を読んでいた。
それ自体は、しかし、黒歴史、ではない。
もうほとんど憶えていないけれど、

同じクラスの女子が、
『りぼん』を読んでいるのを見かけて、
「高1にもなって『りぼん』て」みたいなことを、
僕は言ったのだと思う。

何も言い返さなかったその子には、
小学生の妹がいて、『りぼん』は妹と共有のもので、
それを知ったときに「ごめん」を言いそびれた僕は、
「ごめん」の代わりに、なぜか、

『りぼん』を読むという暴挙に出た。



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    げみ



僕が『りぼん』を読んだって、
何も伝わらないし、何も変わらない。
そんなことくらいは分かっていても、僕は、
無謀で、無策で、無為な購読を押し通した。

>他人との感覚的な通路を断ったままで、
>自分の思いを正当化させようともせずに。
>それが自分ですから、それが自分の感覚ですから、
そんなので自足させてしまった。

そっちが、僕の、黒歴史になっている。



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  1. 2021年08月24日 00:00 |
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塗装生活 72/xx


人が生きる理由は何か、
ってのは、今の自分が理解できる理由に、
収めてしまってもいいのか。
ないものねだり、ではあるけれど。

14歳の自分に理解できた理由は、
23歳の自分が理解できる理由と同じか。
32と41では、どっちが嘘で、
どっちが本当になるのか。



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    げみ



分別盛りの50なら、
世の中に流通しているような、
誰にも反論されないような理由で、
分別くさく収まりをつけるのか。

先達に倣うのなら、
32や41の誰かの理由で、
14や23の自分を生きるのか。
60や70の誰かの理由で、

32や41の自分を生きるのか。



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  1. 2021年08月23日 00:00 |
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塗装生活 71/xx


人が生きる理由、ってのは、
生きるには、何か理由がある、
ってことである。

そして、その理由は、ざっくり、
人で括ることができる、
ってことである。

つまり、おおよそ、人はみんな、
同じ理由で生きている、
ってことだろう。



    以前には、人生には生きる意義があるのかどうかを
    知ることが問題であった。
    しかし、ここでは反対に、人生には意義がなければないだけ、
    それだけよりよく生きられると思われる。
    ―― シーシュポスの神話/アルベール・カミュ
    ―― 清水徹訳、1969、新潮文庫



なぜみんな同じなのか、
そもそも、なぜ理由がいるのか、
そこは、考えないとして。

人が生きる理由は何か、
まるで他人ごとのような文字列は、
誰のことを言っているのだろう。

自分が生きる理由を、あらかじめ、
誰かに言い当てられるなんて、
そんなの、くやしくないか?

そんなの、うざくないか?
それよりも、自分なら、どんな理由にするんだ?
って問いに変えたほうがよくないか?

答を出し合える問いにならないか?



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    げみ



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  1. 2021年08月22日 00:00 |
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塗装生活 70/xx


遺伝子を残すため?
嘘つけって。
なによりも、まず、
僕たちは、遺伝子ではない。
遺伝子が生きる理由なら、
それでも構わないとして。

僕たちは、人として、
何十年かを生きてきた後に、
人が生きる意味を問う。
なぜ生きるのか、って理由を問う。
遺伝子なんかで、
意味が足りるわけがない。

生きる意味を問わない者の、
生きる意味なら、
遺伝子で説明してもいいけれど。
生きる意味を問う者なら、
そんな答は、おおよそは、
人のものとして扱えないだろう。

塩基の並びなんて、
人に比べたら、おそらくは、
何の意味も書かれていないんだ。



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    げみ



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  1. 2021年08月21日 00:00 |
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