tetsugaku poet

qinggengcai

なぜブログを書くのか 5/6


普通の人が、
普通の日常のできごとについて、
普通の文章を書く。

そんな散文は、控えめに言ってもゴミだと思う。
つまりは、99%のブログはゴミだと思う、
もちろん僕も含めて。

どうしよう、
否定的になってきた。



しかし、もしも普通の人の物語が、
まったく誰にも知らされないとしたらどうだろう。
その機会がまったくなかったとしたら。
物語が闇の中に捨てられたままだったとしたら。



なぜブログを書くのか、
理由はあらかじめ用意されている訳ではない。
その意味では、理由はない。

しかし、明日になれば必ず誰かに何かが起きる。
明日になれば理由は変わる。



例えば、愛する者への愛も語らないままに、
愛する者のために死んでいった者たちが、
数限りなくいたことを僕たちは信じている。

僕たちには知ることができないが、
闇の中には、深い愛がこめられた物語がいくらでもある、
そう思う。

明日、誰かが生まれた喜びや、
星になった悲しみや、
もっと些細なことでもいい、
誰かがブログを書くから、
誰かがそのブログを拾い上げるから、
僕たちは数限りない、
僕たちに知らされていない物語がいくらでもあったと、
信じることができるのかもしれない。



明日の月は黄色くて大きくて、
明日は車がきれいに洗われて、
明日の犬は全力で駆け回り、
明日は生涯を共にする人と出会う。

それを神と呼ぶことが許されるのなら、
僕の神々は小さな生を共に生きて、
共に死ぬ者たちと共にある。

僕が神々を必要とし、
神々が僕を必要とすることで成り立っている。
それを神と呼んでいいのなら。



誰かを照らすほどの明るさはない。
饒舌に語りかけたりはしない。

普通の文章で、
得体の知れないプラットホームに載せて、
明日も誰かの物語が、
闇の中に小さく輝くだろう。



……
こよなく至福なものたちはおのずからにはなにも感ぜず、
こう言うことが許されるとしたら、
必ずや神々の名において
ある他者が心を寄せて感じなくてはならない。
この他者を神々は必要とするのだ。……

――“ライン”~“ヘルダーリン全集 2 ―― 詩Ⅱ(1800-1843)”より
手塚富雄、浅井真男 訳、1967、河出書房



……
彼が
10ワットの太陽
懐中電灯のような太陽でも
他人は
月や星のように
寒々と輝く義務がある

――“比喩の太陽”~“吉野弘詩集”より
1968、思潮社







  1. 2013年01月28日 22:16 |
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

コメント

〉ある他者が心を寄せて感じなくてはならない。
〉この他者を神々は必要とするのだ。……

ヘルダーリンは凄いなあ。

わたしの小説もブログも読者を必要とします。
この読者とわたしの関係と、神とわたしの関係にいかほどの違いがあるでしょう?

仕事しよう。
  1. 2013/01/29(火) 10:15:27 |
  2. URL |
  3. 瀧野信一 #-
  4. [ 編集 ]

明日、誰かが月を見て、洗車して、
犬と散歩して、誰かと出会ったことを書いたなら、
ブログだったら、僕も心を寄せて、月のように輝こうと思います。
小説だったら、つまらない、と言って顧みないかな。

小説家に対しては、僕も、きっと神々も、そっけないそぶりで。
  1. 2013/01/29(火) 20:39:10 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

おお、ヘルダーリンとは。
ブログによって知ることができる物語がある。同感だけど知らなくても良いことまで知らされる。
本当に重要なことについては、人は沈黙を守ると思う。
ブログの中にある、触れてはいない部分、そこが案外重要だったりする。
ブログ読者は、行間を読む能力がいるように思う。
  1. 2013/01/29(火) 23:20:10 |
  2. URL |
  3. oki #-
  4. [ 編集 ]

ヘルダーリン、塔の中で後半生を過ごした人ですね。
僕の中では、中世の終わり、トランシルバニアの古城のイメージ。
スピノザのレンズ磨きとともに、なにやら感慯が混じってくる人なのです。

同時多発テロとか福島とか、
僕たちに知らされていない物語が輝いているはずです。
対して、僕のくだらない散文は検索の邪魔、
肩身の狭い思いがしてきます。
  1. 2013/01/31(木) 18:23:59 |
  2. URL |
  3. 青梗菜 #-
  4. [ 編集 ]

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